うつ病は気分障害の代表的な病気で、憂鬱な気分、興味・意欲が出ない、考えがまとまらないなどの精神症状と、眠れない、疲れやすいなどの身体症状が一定期間以上続き、日常や社会生活に支障が出る病気です。うつ病は決して心の弱さのみが原因で起こるものではなく、遺伝背景のあるもの、病前性格(メランコリー親和型性格など)に心因(心理的ストレス)や身体因が重なり発症するものなど様々な要因があります。うつ病は、脳内のセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどの精神的なバランスを保つ神経伝達物質の不均衡が主な病態の一つと言われています。日本でのうつ病の発生率は3~7%と言われており、各年齢層に幅広く分布して発病するとされております。また、男女比では1対2と女性に多いと言われております。しっかりとした診断を受け適切な治療を受ければ治すことができる病気です。
▷感情にあらわれる症状 気分が思い、悲しい、いらいらする、むなしいといった気持ちになる ▷思考にあらわれる症状 考えがまとまらない、相手の言うことが理解できない、物事の判断、記憶ができない ▷行動にあらわれる症状 億劫になる、意欲がなくなる、興味や関心がなくなる ▷身体にあらわれる症状 眠れない、頭が痛い、食欲がない、身体が痛む
まずは、どのような症状がどれくらい続いているか丁寧に問診を取っていきます。うつ病は、気分、思考、行動・意欲といった多元的な面での支障が一定期間以上続かないと診断はできません。診断は主にICD-10というWHO(世界保健機関)の作成した世界的な診断基準やDSM-Ⅴといった米国精神医学会の作成した診断基準に則って行います。検査は補助的なものですが、自己記入式の質問紙(SDSなど)、治療者や問診者が客観的な観察に基づいて行う評価法(HAM-Dなど)を行います。また、うつ症状を呈する方には甲状腺機能低下症などのホルモン異常が原因になっている場合もありますので、初期の段階で血液検査を行い、これらの身体疾患によるものか否かを検査することもあります。 なお、一部マスコミで取り上げられている血液中の微量物質を測定する方法や光トポグラフィーやfMRIなどの機能画像法では、現段階では診断補助的な役割であり確定診断する方法には至っておりません。
うつ病の治療は薬物療法、精神療法、環境調整の3本柱で行われますが、一番大切なことは心と身体を休めることです。うつ病の方は休むことに罪悪感を感じることが多く、休息をとらない傾向が多いのですが、まずはしっかりと心と身体の休養をとることが重要です。 当院での治療は、うつ状態を改善するお薬の処方(抗うつ薬、抗不安薬など)と、患者様の回復状況に応じた心理、生活上のアドバイスを行います。また場合によっては、認知行動療法などのカウンセリングをお勧めすることもあります。お薬を使う場合でも、できるだけ副作用の少ない抗うつ薬や抗不安薬を必要最小限投与するようにしております。
症状が良くなった場合、患者様ご自身の判断で薬を飲むことを止めることがあり、その後症状が再燃、再発することがあり、場合によっては重くなってしまうことがあります。処方したお薬の内容や量は患者様の状態を判断した上で調整しておりますので、飲む量・用法は必ずお守りください。 また、しっかりと心と身体に休息を与えてあげてください。心の休め方は、自分で考えても答えの出ないことについては、意識しないように心がけることです。旅行などの無理な気分転換はかえってご自身に負荷をかけ逆効果になることもありますので、医師に相談してください。