発達障害は、生まれつき脳の発達が通常と違っているために、幼児のうちから症状が現れ、マイペースすぎる、友達作りやコミュニケーションが上手くいかない、といったことで多くは幼少時から小学生にかけて気づかれることがあります。しかし、症状には個人差が大きく、自身や親が発達障害に気付かず、成長するにつれ大人になり、自分自身のもつ不得手な部分に気づき、自分はどこか人とは違う、といった生きにくさを感じることがあります。そして、学校や社会に出て、この対人・社会関係の悪さから、変な人、利己的、など様々なレッテルを貼られ、二次障害としてのうつ病、不安障害を併発したり、場合によっては、アルコールや薬物依存といった手段で、この「生きにくさ」から逃れようと試みたりします。ですが、発達障害はその特性を本人や家族・周囲の人がよく理解し、その人にあったやり方で日常的な暮らしや学校や職場での過ごし方を工夫することが出来れば、持っている本来の力がしっかり生かされるようになります。
発達障害は、生まれつきの特性で、病気ではありません。発達障害はいくつかのタイプに分類されており、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害、吃音(症)などが含まれます。これらは、生まれつき脳の一部の機能に障害があるという点が共通していますが、同じ人にいくつかのタイプの発達障害が併発することもあり、そのため個人差がとても大きいという点があります。
大人の発達障害の診断を行うためには、前述したようにこれらの症状は幼少期や学童期から顕著になりますので、この時代の情報がとても重要です。両親からの情報、母子手帳、通知表などが必要になる場合がありますので、診察時にこれらを持参くださいとお願いすることもあります。 診断は、ICD-10やDSM-Vに則って行いますが、大人の場合は、質問紙法やWAIS-III、CARRS、といった専門的な検査を行い、診断の補助に使います。
大人の発達障害の場合、患者さんの特性や状態に応じた治療となります。特に薬物治療に関しては、ADHDに対し、脳内の神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンの不足を改善する働きのある薬剤が、日本では現在2種類あります。また、うつ病、不安障害などの二次障害がある場合は少量の抗うつ薬、や抗不安薬などの気分安定薬や漢方薬などの薬物療法が用いられることもあります。
親をはじめとする家族や友人、会社関係者など本人と取り巻く人たちが、大人の発障害に対する知識や理解を深め、本人の特性を理解することが、本人の自尊心を低下させることを防ぎ、自分を信じ、勉強や作業、社会生活への意欲を高めることにつながります。