多くの人の前で話をしたり、発表をしたりするなど注目を集める状況や会議などの特別な状況に身を置かねばならない場合に、普通の方よりはるかに強く不安や緊張を感じ、体の震え、動悸、発汗などが見られ、うまく話せずどもってしまう(吃音)、顔は真っ赤になり頭の中が真っ白になる、など普段できることが円滑に出来なくなる病気です。強い不安や恐怖を感じ、また恥をかいてしまう、など考えるようになり、このような状況を避け、日常・社会生活に支障が生じます。性格傾向として完璧主義、他人からの悪い評価を受けることを恐れる、などの特徴があると言われますが、決して性格のみによるものではなく、不安障害の一つの病気とされております。日本での有病率は0.8%程度と言われております。
人前に出たり、会議の場になると強い不安や緊張を自覚すると共に、動悸や発汗、吐き気、ふるえなどの身体症状が現れます。前述のようにうまく話せずどもってしまう(吃音)、顔は真っ赤になり頭の中が真っ白になる、など本人の意図する言動が行えなくなります。ただし、これらの状況を離れ日常場面に戻ると、今までとは変わらず普段通りに生活できることも、この病気の特徴です。
診断は、ICD-10やDSM-Vに則って行います。特定の状況で上記のような精神症状や身体症状が繰り返し出現し、場合によっては予期不安を伴うこともあります。特定の状況以外ではこれらの症状が出現しないことも診断を行うに当たって重要な条件です。
治療法には、主に薬物療法と心理療法(認知行動療法)があります。パニック障害に治療と類似しましが、抗不安薬やセロトニン調節薬であるSSRIなどを必要最小限に用い、特定の状況でこれらの精神症状や身体症状が起こらなくなるまで治療を行います。副作用も考慮し、発作が起こらなくなるまで必要な量を十分な期間服用し、症状がなくなっても数か月は服薬を継続する必要があります。次に不安が軽くなってきたら、今まで避けていた人前や会議の場に少しずつ慣らしていく訓練(曝露療法[ばくろりょうほう]:行動療法の一種)を行い、併せて自律訓練療法という、不安や動悸などの自律神経症状を緩和させるセルフトレーニングを用いることもあります。
症状が良くなった場合、患者様ご自身の判断で薬を飲むことを止めることがあり、その後症状が再燃、再発することがあり、場合によっては重くなってしまうことがあります。処方したお薬の内容や量は患者様の状態を判断した上で調整しておりますので、飲む量・用法は必ずお守りください。 症状に対する不安がしっかりと無くなるまで服薬を続ける事が大切です。社交不安障害の症状は軽快と悪化を繰り返しながら快方に向かいますので、それに一喜一憂しないようにしてください。また、症状が軽く一過性でおさまる場合もありますが、軽快と悪化を繰り返し慢性に経過する場合がみられることがあるので、心療内科の専門医の診察を受けてください。また、ただの緊張が強い人と誤解され、社交不安障害であるとはわかりにくい患者さんの辛さを職場の方が理解し、職場の環境配慮をしてあげるなどの協力も必要です。