統合失調症は、20代前後の比較的若い時期に発病することが多い病気で、幻聴(被害的な内容が多い)や妄想(見張られている、悪いことをされるなど)をはじめ、情動の変化がなくなり、自閉的な生活に陥るなど多彩な症状が現れる慢性的な経過をたどる病気です。統合失調症の出現頻度は地域や文化による差があまりなく、日本でもおよそ100人に1人の割合で発症する病気で決して珍しくはありません。症状は急に現れることもあれば、時間をかけてゆっくりとあらわれることもあります。遺伝的な背景のあるものからないものまであり、原因はまだはっきりと分かっておりませんが、胎生期から幼少期にかけての神経機能の発達に障害があり、それに環境的な要因が修飾されて発病するのではないかと言われております。統合失調症患者さんの脳内では、ドーパミンやセロトニンといった緊張‐弛緩に関与する神経系や、意欲やその持続に関連する神経系、情報処理・認知に関する神経系に何らかの障害が起きているといわれています。
統合失調症では主に以下のような症状があらわれます。気になる、当てはまると思うものがある場合は、一度心療内科を受診されることをおすすめします。
診察の中で、どのような症状がいつから出現しているのか、その症状の出現に何かきっかけや原因はあるのかなど、まず問診を丁寧に取ります。もちろん睡眠自体の障害ではなく、うつ病など他の精神疾患の有無を鑑別していきます。これらが除外されれば診断は比較的容易につけられますが、一部、睡眠関連呼吸障害や過眠症や睡眠時随伴症などが疑われる場合には、終夜ポリソムノグラフィー(PSG)検査などが必要になる場合があります。
統合失調症の治療の原則は、薬物療法です。当院では、最初は症状を抑えるために薬をしっかりと服用していただき、症状が治まってきた段階で薬を減らしていく。それが全体的な薬の量をもっとも少なくする方法です。 統合失調症の症状が、ドーパミン系やセロトニン系といった神経伝達物質の不均衡と関連が深いことが認められて以来、多くの治療薬が開発されてきました。とくに近年、第二世代の抗精神病薬と呼ばれる治療薬が開発され、従来の第一世代の薬より陽性症状に効果があるばかりでなく陰性症状にも効果があるといわれていること、錐体外路症状(手の震えや体のこわばり)といった生活に支障を起こしやすい副作用が少ないことで、より好ましい成果をあげつつあります。ただし、薬剤によっては、体重増加や糖尿病を誘発・悪化させることなど副作用も併せ持つため専門医に薬の効果と副作用について説明を受け、十分理解した上で服用することが大切です。また、病状によっては睡眠薬、抗不安薬、気分安定薬などの薬を併用することもあります。当院での処方原則は、1種類の薬を適用量で処方し、同種の効果を持つ何種類もの薬を重ねて服用する方法はとらないこととしております。日本では、かつて多剤併用(多種類の薬物を大量に処方する)の習慣がありましたが、第2世代の抗精神病薬の適用法は、このような処方の方法論の反省の上に成り立っておおります。 また、一般的な社会活動に徐々に復帰し地域のなかで普通に暮らしていくために、精神科リハビリテーション(デイケアや共同作業所)を用いていきます。 障害がありながらも、サポートや工夫によって、地域社会のなかで「普通の人」として生活していけるようになることが、私たちの目指すあり方ということができるでしょう。
病気の予後について、以前から統合失調症は予後不良である、人格が荒廃する、などといわれてきましたが、最近の研究の成果では長期予後は50%以上の人が回復したり軽度の障害のみですんでいると言われております。さらに、適切な薬物療法を維持し、リハビリテーションが行われた場合は、回復の度合いはさらに良好と言われております。病を抱えながらも生活を維持していくことを大切に考え、地域社会のなかで医療や生活支援などを受けながら、家族や周囲の人々との適切な関わりが交わされることで、再び社会のなかで人生を積極的に生きていくことができるのです。このためにも、自分の判断で勝手に服薬を中止したり、リハビリテーションに参加しなくなることなどを絶対にしないように心掛けましょう。