月経前症候群(PMS:Premenstrual Syndrome)は、月経前3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状で、月経が始まるとともに減ったり消えたりするものをいいます。 下腹部や乳房の痛みなどの身体的症状と、憂うつ、いらいら、不安などの精神的症状が現れ、日常生活に支障をきたしてしまう病気です。原因にはさまざまな説がありますが、現在のところは不明です。考えられている説として、生理に伴うホルモンバランスの変化、具体的には卵巣ステロイドホルモンに対する標的器官(ホルモンの影響を受ける器官)の感受性の差があるのでは、また、水分貯留症状や低血糖類似症状からレニン・アンジオテンシン系の異常、耐糖能の異常があるのでは、また、セロトニンなどの神経伝達物質の異常分泌があるのでは、など様々な説があります。PMSの症状は身体面にあらわれるもの・精神面にあらわれるもの、軽いものから重いものまで200種類以上あるといわれています。また、症状があらわれるタイミングも、生理2週間前からあらわれる人もいれば、2、3日前に集中して症状があらわれる人もおり、1人1人によって、症状の出現、程度に大きく違いがあります。
症状は月経前に周期的に現れますが、その現れ方には変化があり、月によって程度が異なることも少なくありません。
ご自身に起こる種々の身体的、精神的症状などを記録することにより、現れた時期、周期性などを評価して診断します。排卵周期との関係を検討するために、基礎体温も同時につけることも必要になる場合があります。
薬物療法と非薬物療法があります。 当院でのPMSの治療は主に、漢方薬での治療が主体となります。また場合によっては、抗不安薬と頓服(一時的に症状が辛くなった時を抑える薬)を併用しての治療も行います。また、現在ではSSRIがPMSの症状に奏功する場合もあり、黄体期だけの投与でも十分効果がみられることがあります。重い症状が続く患者様には、対症療法としては利尿薬、鎮痛薬、ホルモン療法としては低用量ピルを用いることがあります。これらの治療、特にホルモン療法に関しては、婦人科を受診していただくことをお勧めしており、必要な場合は、婦人科への紹介状もお出しいたします。 非薬物療法としては、症状を調査して、その成り立ちをよく理解し、食事、運動、リラクゼーションなどにより生活習慣を改善することを提案しております。
PMSによって、日常でイライラしたり、落ち込みやすくなり感情の起伏が激しくなって、いつものと違う自分に悩んだりする人も多いと思います。男性には理解しにくい辛さだからこそ、何も伝えないと理解されずに、周りに悪影響を及ぼしてしまうこともあります。家族、夫、パートナーにPMSの症状を話したり、今はPMSで辛い時期だということを事前に伝えることは大切なことです。